【ブラひろし】『うなふじ』
1月29日(月)
伊勢神宮では然して風を強くは感じなかったように思うのだが、ここ、三重県は津市の北に位置する「鰻専門店・うなふじ」では、雪を冠く鈴鹿から伊勢平野へと強い風が吹き抜ける。その強風に鰻を焼く煙は、まるで行き場を失っているかのような慌ただしい動きを見せていた。
この日、月曜の12時前だったにも関わらず既に列を為して並ぶ客足で混雑し、店内に足を踏み入れるに約30分の時間を要した。しかし、この店特有の回転の良さは、粛々と客を捌いていく。あれほど並んでいた客が、不思議なスピードで瞬く間に店内に吸い込まれる。もちろん出て行く客のスピードも速かった。
店舗名は『うなふじ』
この界隈では人気を誇る鰻の名店のようだが、その秘密の最たるものは、なにより安価であることだろう。
添付の品書を見て貰えば、それは一目瞭然で、しかも本格炭火焼とのこと。本格的というからには白炭(備長炭)を使っているに違いない。
特上の鰻丼が税込価格¥2200とは、現代に於いては殊のほか安価だが、鰻そのものは仕入の上手さが伺える。
粗悪な鰻などでは決してなく上質な鰻なのである。美味い鰻を安価で食べさせる稀有な店だと感じ入った。
因みに鰻重と鰻丼は鰻の量に差異があり、同じ鰻を使っているも鰻重に比べて鰻の量が少ない鰻丼のほうが安価に食べられるということを付け加えておく。ようは、鰻重の方が鰻丼に比べて良質な鰻を使っているという次第ではないのだ。今後の御参考にして頂ければ幸いである。
さて、食す。
ふむ。関東の蒲焼に慣れた私にとっては少し変わった食感で、そのカリっとした焼き上りは、関東や関西で味わう歯触りとは全く違った味わいがあった。タレと焼き方が明らかに違うのだ。しかし、これはこれで中々の趣きがあって充分に満足する。
「うなぎは煙を喰わすもの」
総評は◎の優良店である。
店内で御働きの方々の接客も極めて佳く、肝吸い、厚切りのタクアンなど、付合せも非常に美味しかった。
添付の写真は「特上」なのだが、よく見ると鰻の切身が少ないことに気付く。
その通り!特上は飯の内部に一切れ仕込まれている。
最後に、もう一首。
「江戸前の風を団扇で叩き出し」
鰻の蒲焼は、とても美味しい食べ物である。日本人に生まれて本当に良かったと思ふ。
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